2496 / 3581
番外編 かいとくん
「兄貴、気付いたか?あのアイス売り、婆さんの格好はしているが、男だ」
「龍も気付いたか」
二人は鋭い眼力でアイス屋さんの正体を見抜いた。
「あのアイス屋、いつからここに来るようになったか知っているか?」
「いつってきかれても……ねぇ、めぐみちゃん、ゆうきくん。困っちゃうよね」
「せんしゅうにはいたよ。でも、そのまえのしゅうにはいなかったような」
「かいくんにきいてみたら?」
「かいくんって?」
「ここのおうちの子」
めぐみちゃんが目の前にある大きな家を指差した。敷地内には畑があり、ビニールハウスが建っていた。
「かいくんちには小さなほこらがあるんだよ」
「りゅうおじさん、ほこらっていうのはね、神様をまつるところだよ」
「そのくらい俺でも分かる」
「ほんとにわかってる?」
疑いの目を向けられ、ぎくっとする龍成さん。
「めぐみに一本取られたな」
彼が苦笑いを浮かべた。
キックボードに乗っているのがかいくんだと教えてもらい、龍成さんが声を掛けると、土日以外は来るから毎日アイスを買っているんだ。今日で九本目と得意気な顔で教えてくれた。
「となると先々週の木曜日辺りからうろついているってことか。ありがとうな」
「やっぱり、かなたくんのぱぱ、かっこいい!」
「そうか?照れるじゃねぇか」
龍成さんが首の後ろを撫でた。
ともだちにシェアしよう!