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番外編 かいとくん
男性が首から財布を取ろうとすると、
「これはぼくのだよ!さわらないで!」
かいとくんが突然大声を張り上げて男性の手を払いのけた。
「ぼくはヤクザなんて大きらいだ。弱いもののをいじめてばっかいる。くそみたいなれんちゅうじゃん。かなたはいじめられてとうぜんじゃん。かなたもめぐみもゆうきもくそ以下じゃん」
「かいと!」
男性が声を荒げた。
「菱沼組や縣一家ほど人情味に溢れているヤクザはいない。見た目で判断するなっていつも言ってるよな?」
「うるせー!」
かいとくんはあっかんべーをすると、キックボードを蹴飛ばして走り出した。
「かいとくん待って」
一緒にいた友だちが慌ててあとを追い掛けた。
でも一人の男の子がなぜか戻ってきた。
「叔父さん、かいとくん、アイス屋さんからお金をもらっていたよ」
片方の手をパーに広げた。
「そうか。教えてくれてありがとう。そんなにもらったのか?」
「うん。知らないひとからもらっちゃだめだよっていったんだけど……ぼくがいったってないしょだよ」
「分かった。約束する」
男の子はキックボードに乗ると、かいとくんたちを追い掛けた。
「お恥ずかしいところを見せてしまい、すみません」
男性が頭を下げた。
「いろいろと訳ありみたいだな」
彼が男性に声を掛けた。
「専門の捜査員がこっちに向かっている。校庭にいる捜査員には渡さないほうがいいぞ。面倒なことになるから」
「はい、分かりました」
男性は白い包みをじっと見つめた。
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