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番外編 かいとくん

車内は重苦しい空気が流れていた。 奏音くんは何度も目を手の甲で擦りながら、もう片方の手で龍成さんの手をずっと握っていた。 「いじめは今も続いているのか?」 「かいとくんたち男子が、おもしろがって、かなとくんのことをいっつもからかうの」 「わざとぶつかっておきながら、ごめんもしないで笑っているんだ」 「もしかしたら、かいとっていう子は、奏音が羨ましいのかも知れないな。ほら、さっき、かっこいいとか言っていただろう。ずっと気になっていたんだが、もしかしたら逆じゃないかなって」 「逆?」 「僕の本当の父ちゃんほうが、奏音のパパの何倍もかっこいい。本当はそう言いたかったのかもな。おそらく新しい父親と上手くいっていっていないんだろう。龍パパ、もしかしたら、かいとっていう子に会っているかも知れない。あの目、どっかで見たことがあるんだ」 「え?」 奏音くんが驚いたように顔を上げた。

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