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番外編 甘えん坊は卒業
ーカミさんにしか興味がないお前が、他人に興味を持つなんて珍しいな。頼むから雨を降らせないでくれよー
ー見ないうちに大人になったんじゃねぇか。甘えん坊のばぶばぶはこれでもう卒業だなー
「二人とも勘弁してくれ」
龍成さんは苦笑いを浮かべていた。
五分後、黒光りする大きな門構えの家が見えてきた。
柚原さんと度会さんが若い衆とともに出迎えてくれた。
「連絡をもらって布団の準備はしておいた。俺はめぐみを抱っこする」
柚原さんがめぐみちゃんを起こさないように横に抱っこして後部座席からそっと出してくれた。
「優輝は俺が抱っこしよう」
「会長無理しないでください」
「そうですよ」
「ぎっくり腰にでもなったら大変です」
「まだまだ若い者には負けない。じじぃ扱いするな」
心配する若い衆を軽いジョークで一蹴すると、青空さんに寄り掛かり熟睡する優輝くんのお尻に手を差し入れ、起こさないように細心の注意を払いながら抱っこしてくれた。
「龍成も青空も頭をぶつけないように気を付けて降りろ。未知さんも足許に注意して、ゆっくりでいいからな。鍋山、佐治、悪いがランドセルと弁当袋と水筒を手分けして運んでくれ。未知さん、荷物は運ぶから無理すんな」
「あ、でも……」
「俺の目は節穴じゃないぞ。年寄りの言うことは素直に聞くもんだ」
「姐さん、会長の言う通りです」
車から降りるとき目眩がして、足元がほんの一瞬だけふらついた。誰も気付かないと思っていたけど、柚原さんも度会さんも、みんな気付いていた。
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