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番外編 最高の褒め言葉

「それってまずくないか?」 「どうした龍?」 「確か産科と婦人科は同じ病棟だったよな?柚と海翔の母親がばったり会ったらどうする」 「どうすると聞かれてもな。もしかして思い出したのか?」 「すっかり忘れていたが、遼兄は覚えていた。今野の借金の原因はカミさんだ。詳しいことは俺より遼兄が詳しいからあとで聞いてくれ。今野は息子を守るため、遼兄にやくざになりたいと直訴した。でも、母親は事実と異なることを息子に話し信じ込ませていたみたいだ。今野の自殺の原因もさも縣一家にあるように息子の耳に吹き込んでいた。だから、海翔はあんなことを言ったんだ。喉に引っ掛かった小骨がようやく取れた」 「やっぱりな」 斎木先生がぼそっと呟いた。 「やっぱり、というと?」 「目付きと匂いだよ。ドヤ街で俺は薬物中毒の患者を何十人と診てきた。だから、見れば分かる。柚には事情を説明し、とりあえず循環器内科病棟に移ってもらった」 「さすが斎木先生。仕事が早い」 「いやぁ~~照れっちまうべした」 斎木先生が頭を掻いた。 柚さんの名前が聞こえたのか、めぐみちゃんが顔を出した。 「ママから手紙を預かってきた。仲良く読むんだぞ」 「先生ありがとう」 ペコリと頭を下げると、大事にそうに両手で抱き締めてバタバタと走っていった。

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