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番外編 足だけの幽霊

きゃーという紫さんの悲鳴まで聞こえてきて、何事かと思い急いで家の中に戻った。 「紫さん大丈夫ですか?何があったんですか?」 「すっかり腰が抜けてしまって立てないのよ。未知さん、悪いけど主人を呼んできてちょうだい」 「は、はい。分かりました」 紫さんは畳に尻餅をつきながら、放心状態で仏間を見上げていた。 「足だけの幽霊だと?」 「鍋山も譲治も見たのよ」 譲治さんは柱にしがみつき、半泣きしながらぶるぶると震えていた。鍋山さんは譲治さんにぴたりと寄り添い、会長も来てくれた。もう泣くな。そう声を掛けながら宥めていた。 「あれは子どもの足だった。畳の上をぺたぺたと歩き回っていた。ちょっと目を離した隙にいなくなっていた」 「そうか、なるほどな」 度会さんがちらっと仏壇のほうを見た。裏には狭いけど押入れがある。 「しー」 度会さんが人差し指を立てた。 「口も達者だが、うろちょろしてかなり活発な子だと聞いた。昨日は庭師が剪定作業をしていた。出入りする隙を見て忍び込んだのだろう」 鍋山さんに懐中電灯を持ってこさせると、度会さんが押入れを静かに開けた。 「かくれんぼうは終わりだ。怒らないから出てこい。ほら、手を貸してやる」 度会さんが手を差し出した。

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