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番外編 幽霊の正体

「車は三日前に盗まれて盗難届が出ていた。隣町の国道沿いの空き地に乗り捨てられているのがついさっき発見されたが、車内はもぬけの殻で海翔は見付からなかった。女性警官が鉄将に事情を聞いたが、怯えるばかりで貝のように固く口を閉ざし、何一つ話そうとはしなかった。橘と柚原夫婦はやっぱすげぇな」 「私も柚原さんも何もしていませんよ」 鉄将くんは泣き疲れて、コアラみたく橘さんの体にしがみつきすやすやと眠っていた。 おじいちゃんに家に帰ろう。と言われた鉄将くん。お父さんに怒られるから家に帰りたくないと断固拒否し、今度はトイレに鍵を掛けて立て籠ってしまった。 こうなったらどうしようもない。お手上げだ。遠山さんは庭の剪定作業をしながら、それとなく鉄将くんのことを見守っていた。 橘さんと柚原さんが根気強く鉄将くんに声を掛け続け、一時間後なんとかトイレから出てきてくれたけど、今度は渡辺さんら警察官の姿を見るなり大きな声で泣き出した。

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