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番外編 心の叫び

「鉄将、きみのお母さんは生きている」 「嘘だ。そんなの嘘だ。僕は信じないよ。じゃあさ、僕の目の前で死んだ人は?母さんじゃなかったら誰なの?」 鉄将くんが声を震わせ、彼にいくつも質問を投げ掛けた。 「椎根はマムシのようなサイコパス男だ。きみを連れて何度か脱出を試みたがことごとく失敗。顔が変形するくらいぼこぼこに殴られて、このままいったら間違いなく殺される。だから椎根から逃げるため、海に飛び込んで自殺したように見せ掛けて逃げたんだ。本当はきみを連れて行きたかったが、椎根に人質にされてどうしても助けることが出来なくて泣く泣く置いていったそうだ」 「三年くらい前から宛先不明の絵手紙が年に一回届くようになって鉄将のお母さんは実は生きているんじゃないかって思うようになった。じいちゃんはそのことを知っていたが、鉄将にどうしても言えなくてな。嘘を付いていたんだ。ごめんな」 遠山さんがすっと立つと、鉄将くんに向かって深々と頭を下げた。 「じいちゃん、僕のお母さんはどこにいるの?ひとりぼっちになって施設に引き取られた僕を見付けてくれたようにお母さんも見付けてよ。見付けてくれたら、かいとくんがどこにいるか教えるから」 泣きながら鉄将くんが遠山さんや彼やまわりにいる大人たちに思いの丈をぶつけた。

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