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番外編 二つの疑問
「橘が驚かせるから、すっかりびびっちまったじゃねぇか」
「は?」
橘さんが眦を吊り上げた。
「だから、おっかねぇツラすんなって。怖がっているだろうが。ほら、言わんこっちゃない」
鼻を啜りながら、がくがくと震えながら小さくなって彼の足にしがみついていたのは海翔くんだった。
良かった無事で……ほっと胸を撫で下ろすも、
でもなんで彼と一緒にここにいるの?
瀧田さんとなんで一緒じゃないの?
二つの疑問が生まれた。
「渡辺が父親に息子を迎えに来いと電話を掛けたんだが、小学生の息子はいないと言って一方的に切りやがった。おじさんの瀧田に電話を何度掛けても繋がらない」
「だからといってここに連れてくることはないでしょう」
「いつ殺されてもおかしくない状況下に置かれていたんだ。あのままサツにいたら海翔が精神的に参ってしまい、おかしくなっちまうだろう。橘、悪いが飯を食わせてやってくれ。昨日の夜に菓子パンひとつを食べただけで何も食べていないそうだ。鞠家とハチに瀧田を探させている。そのうち見付かるだろう。飯を食ったら送っていくからさ、この通りだ。頼む橘」
彼が両手を合わせて彼に頼み込んだ。
「私はそんなに鬼じゃありませんよ。海翔くん、おいで。まずはお風呂に入りましょうか?」
橘さんが笑顔で海翔くんに声を掛けて、手を差し出した。
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