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番外編 何があっても味方はここにいる、だから生きて
海翔くんが急に立ち止まり、そのまま動かなくなってしまった。
「どうした?」
海翔くんが何か言いたげな顔をしていた。
「もしかして橘と柚原に用があるのか?」
「うん」大きく頷いた。
「待っているからありがとうをしてこい」
「いいの?本当に?」
「ああ、行ってこい」
渡辺さんの許可をもらい、靴を勢いよく脱ぎ捨てると橘さんと柚原さんの姿を探しはじめた。
「あ、いた!」
台所で片付けをしていた橘さんの姿を見付けると背中にぎゅっと抱き付いた。
「たちばなさん、ありがとう。ごはん、おいしかった」
「ご飯のおかわり、三杯もしましたもんね。お腹、びっくりしてませんか?」
「うん。大丈夫」
嬉しそうに割烹着に顔をすりすりさせる海翔くん。
「ママの匂いがする」
まだまだ母親が恋しい時期なのに。
一番側にいて欲しいのに。
ぎゅっと抱き締めて欲しいのに。
橘さんはくるっと体の向きを変えると、海翔くんを包み込むようにそっと抱き締めた。
「生きていればいつか、また会えます。これから先、辛いこと、悲しいことのほうが多いかも知れない。でもね、これだけは忘れないでください。何があってもあなたの味方はここにいますよ」
頭を優しく撫でると、海翔くんの目には涙が溢れた。
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