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番外編 思い出の花火
「なんでやさしくしてくれるんですか?僕、嫌なことをみんなに言ったし、悪いことしたし、うそついたのに。なんで?」
「理由は特にない。あるとしたら奏音の友だちだからかな?海翔、気が短くて三分と待てないあの渡辺が二十分待ってやると言ってるんだ。時間がもったいない。早く花火をしてこい」
若い衆が海翔くんの靴を持ってきてくれた。
「ありがとうおじちゃん」
「おじちゃんだと?」
彼が一瞬眉をひそめると、
「まちがえた。うづきさんだ」
てへっと笑って誤魔化す海翔くん。
柚原さんに下ろしてもらうと急いで靴を履いて庭に飛び出した。
「かいとくんこれでいい?」
奏音くんが手持ち花火を渡した。
「うん、いいよ。ありがとうかなたくん」
「かなたのりゅうパパがね、いっぱい買ってくれたんだよ」
「かなたくんのパパありがとう」
「おぅ、いいってことよ」
龍おじちゃんでもなく、龍さんでもなく、奏音くんのパパって呼ばれたのがよほど嬉しかったみたいで龍成さんはニコニコと笑って上機嫌だった。
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