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番外編 見えない圧力
「オレ、一生根岸の兄貴に付いていきます!」
背中をぴんと伸ばし川本さんが直立不動になり大きな声で発した。
「別に構わないが、伊澤 に焼きもちを妬かれるから、ほどほどに頼む」
「はい!」
川本さんに羨望の眼差しを向けられ、根岸さんは困ったように苦笑いを浮かべた。
「正義漢で熱血漢で面倒見のいい卯月や根岸の背中を追い掛けてヤクザになった者も多い。若い衆にとって卯月と根岸はそれこそ憧れの的だもんな」
浴衣姿の度会さんが姿を見せた。
「根岸、相変わらず若い衆からモテモテじゃねぇか」
「会長、冗談はよしてください」
「冗談でこんなことが言えるか」
げらげらと豪快に笑い出した。
「根岸、伊澤、若井の化けの皮を剥がす絶好のチャンスだ。物言わぬ証拠を突き付けてぎゃふんと言わせてやれ」
「はい、会長。俺のめんごい娘を侮辱したことを後悔させてやります」
紙切れを持参したジッパー付きの密封袋に入れた。
「じゃあ、失礼します」
軽く頭を下げると、伊澤さんに行くぞと声を掛けた。
「根岸の兄貴、置いてかないで下さいよ」
川本さんが慌てて二人のあとを追った。
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