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番外編 覃さんは神出鬼没

「あら~~千里さんじゃないの」 「紫さん、すっかりご無沙汰してます」 「見ないうちにますます綺麗になったんじゃない?」 「もう、やだ。紫さんたら」 バンバンと橘さんの背中を叩くお姉ちゃん。 橘さんはかなり迷惑顔だ。 紫さんは終活のため断捨離をはじめたみたいで、所持していた着物のうち一度も袖を通していない着物をお姉ちゃんにすべて譲った。今、お姉ちゃんが着ている着物も紫さんからもらったものだ。 「千里、頼むから、俺の大事な優璃をあまり叩かないでくれ」 「柚原、相変わらずぱぱたんしてるのね。あら、ひまちゃん、見ないうちにまた大きくなったんじゃない」 「みっちりしてきたから、抱きやすくやった。抱っこするか?」 「抱っこしたいけど、ネイルチップをつけているから……もし万一飲み込んだり、怪我をさせたらそれこそ大変だから、あとにするわ」 「そうか。それは残念だな」 「柚原さん、僕が抱っこします」 陽葵を腕の中にそっと抱っこすると、口をへの字に曲げて今にも泣きそうな顔になった。 「覃、怖い顔で娘をガン見するんじゃねぇ。ただでさえ寝起きで機嫌が悪いのに………あぁ、もう。言わんこっちゃない」 彼に言われてはじめて後ろに覃さんがいることに気付いてビックリした。気配をぜんぜん感じなかった。いつからいたんだろう?

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