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番外編 お兄ちゃんに構ってもらいたいお姉ちゃん

「可愛いからついつい見てしまう。悪気はないんだ、許せ。千里、久し振りだな」 「元気そうで良かったわ」 「さっき、卯月によく似た男を見掛けたが、俺の目の錯覚か?」 「似てて当たり前よ。遥琉お兄ちゃんの父親だもの」 「親父も一緒なのか?」 彼が驚いたような声を出した。 「たまたま偶然、同じ新幹線に乗り合わせたのよ。嫁と孫が待っているから帰るんだって、そりゃあ嬉しそうだったわよ」 「心のヤツ、寂しがっていなかったか?」 「本人の前ではいなくなって清々するって言ってたけど、本当は寂しいはずよ」 「心も遼と同じでツンデレだからな。千里、遼のことを連れて来なかったよな?」 「連れてこないわよ。願いだからそんな疑いの目で見ないでよ。ネイルチップ外してくるから、ひまちゃん待っててね」 お姉ちゃんがそそくさと逃げるように洗面所に向かった。 「覃、少しは笑ったほうがいいぞ」 「これでも笑っているつもりだが」 「どこが笑ってんだ。怒っているようにしか見えないぞ」 「そうか?なかなかいい男だぞ」 鏡を懐からさっと取り出すと、鏡に映る自分の顔をうっとりとした表情で見つめていた。

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