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番外編 まさかまさかの……
「ぎゃああ~~!で、出た~~!」
「は?なんでお前が陽葵の隣に寝ているんだ!来るなんて一言も聞いてねぇぞ!」
部屋から彼と七海さんの驚いた声が聞こえてきた。
三十分前に陽葵を寝かし付けてきた時には部屋には誰もいなかった。
譲治さんは庭の掃き掃除そっちのけで蟻の行列を熱心に観察していたし、若い衆がひっきりなしに廊下や庭を歩いているから、誰かが部屋に入ればすぐに分かる。
「マー、もしかして遼成さんかな?」
「お姉ちゃんから凪くんと碧人くんの面倒を任されて、身動きが取れないはずだよ」
「違うなら、マーのお兄ちゃん二人しかいないよね?」
「でもそう簡単には家を空けられないよ。仕事だってあるし……それに弾よけもつけずに来るなんて」
「龍成さんだって弾よけもつけずにすっ飛んできて、みんなをびっくりさせたよ」
「そうだよね。紗智さん、部屋に一緒に行ってくれないかな?足ががくがくして、震えているの。転びそうで怖いの」
「マー、緊張しすぎ」
「だって……お兄ちゃんたちに会うの久し振りなんだもの。ドキドキして心臓が持たないかも知れない」
「マー、恥ずかしがり屋で照れ屋。そこがまた可愛い。いいよ、連れていってあげる。しっかり握っててよ。離さなでよ」
紗智さんがクスクスと笑いながら手を握ってくれた。
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