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番外編 底知れぬ不安

「お姉ちゃん、なんで?」 「乗る予定だった新幹線が人身事故をおこしたのよ。あの人混みのなかで、座る場所もなく、ずっと立って待っていたら具合が悪くなるでしょう?だから明日の始発で東京に向かうことにしたの。二人ともおいで」 お姉ちゃんが手招きすると、甲崎さんと大山さんに付き添われ海翔くんと鉄将くんが姿を現した。 「度会さん、急で申し訳ないんだけど五人泊まってもいいかしら?」 「もちろんだ。誰か、オヤジと紫を大至急呼んで来てくれ」 ほろ酔い気分の度会さんが廊下に控える若い衆に声を掛けると、すぐに呼びに行ってくれた。 「子供たちが上がったら風呂に入って来たらいい」 「ほら、二人とも。何て言うんだっけ?練習してきたわよね?」 「お、お世話になります」 「よ、よろしく、お、お願いします」 そんなに緊張しなくてもいいのに。 ガチガチになっていた。 「ちゃんと言えたじゃない。二人とも偉いわよ」 お姉ちゃんに褒められると、照れて真っ赤になっていた。 「男性が酔っ払って新幹線のホームに落下したと聞いたが、本当は違うんだろう?」 「さすがはアタシのお兄ちゃん。新幹線がホームに入ってきたそのタイミングで後ろから何者かに突き落とされたの。しかも海翔と鉄将の目の前で。トラウマにならなきゃいいけど」 底知れぬ不安な感情がわいて、彼もお姉ちゃんも顔を曇らせていた。

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