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番外編 底知れぬ不安
ひそひそと小声で話す子どもたちの声が廊下に漏れ聞こえていた。
「一太、明日も学校だよ。朝起きれないからそろそろ寝たら?もう十時半だよ」
襖越しに声を掛けた。
「あと三十分したらねる」
「かいとくんとてっしょうくん明日帰るんでしょう?だからもう少しだけ話しがしたいんだ。ダメかな?」
「ダメじゃないけど、三十分後には寝ようよね」
「うん。わかった」
「ママ、先に寝るけど、何かあったらぱぱたんと龍パパに声を掛けてね」
「はぁ~~い。ママ、おやすみなさい」
「みちさん、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
元気な声が一斉に返ってきた。これは当分寝そうにないかも知れない。
「未知、呼んだか?」
背後から龍成さんの声が聞こえて来たから心臓が止まるんじゃないか、そのくらいビックリした。
「ごめん、驚かせるつもりはなかったんだ。今夜だけは大目にみてやろう、兄貴もそう言っていたし、あとは俺に任せて、未知は寝たほうがいい。どうせ兄貴と千里に安眠妨害されるんだから。どうした?なんか変なことを言ったか?」
「橘さんにも似たようなことを言われたんです」
「そうか。みんな未知の隣で一緒に寝たいもんな。その気持ち、痛いくらい分かる。地竜にとってはとんだ災難だな。でも、ヤツのことだ。這ってでも未知の隣に来ると思う。朝起きたら足にしがみついて寝ていたりして」
龍成さんは笑っていたけど、嫌な予感がしてならなかった。
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