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お祖父ちゃんはみんなの憧れの的

「驚かせて悪かった。地竜がいると聞いて寄ってみたんだ。姐さん、朝どりのレタスを台所に置いてきたのであとは頼みます」 「ありがとうヤスさん」 「あと、そうだ。今が旬の甘夏みかんです。どうしても四季と姐さんに食べてもらいたくて産地から直接取り寄せたんです」 ポケットからみかんを二個取り出すと手にそっと握らせてくれた。 「こんな高いもの、もらう訳には………」 「姐さんに食べてもらったほうが俺も甘夏みかんも幸せです。服持ってきます」 二人の荷物が置いてある居間へと走っていった。 「こらヤス!廊下は走るな!なんべん言ったら」 「すみません度会さん」 ヤスさん大丈夫かな?心配でそわそわしていたら、五分も経たずすぐに戻ってきた。 「海翔、鉄将、服を持ってきたぞ。早く着替えろ」 「ヤスさん」 佐治さんが二人の靴を持ってきてくれた。 「気が利くな。ありがとう佐治」 大急ぎで服を身に付ける二人。 「海翔、けいちゃだ。鉄将、釦のかける場所がひとつずっこけているぞ」 「え?うそ。本当だ」 「えぇ、なんで?」 「茨木さんは逃げないから、慌てなくてもいい。ゆっくりでいいから、自分で直してみようか?」 「はい」 なんとも微笑ましい光景にお祖父ちゃんは竹刀を振る手を止め、肩に掛けたタオルで額の汗を拭きながら目を細めて眺めていた。

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