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番外編 お祖父ちゃんはみんなの憧れの的

「茨木さんにまるで心を読まれているようで、手も足も出ませんでした。構えるだけでやっとでした。さすがです」 「そうは見えなかったぞ」 「錬士の称号を取得し、地元の小学生と中学生に剣道を教えていると聞きましたが」 「なんだもう耳に入っているのか。参ったな」 お祖父ちゃんが頭を掻いた。 「年も年だし、カタギじゃないからと一度は断ったんだが、どうしてもと頼まれて。断るにも断れなくなってしまったんだ」 「茨木さんに教えてもらえるなんて。小学生と中学生たちが羨ましいです」 大山さんだけじゃなく、甲崎さんと海翔くんと鉄将くんにも羨望の眼差しを向けられ、「止してくれ」と言いながらお祖父ちゃんは照れ笑いを浮かべていた。 「甲崎」大山さんが竹刀を渡した。 お祖父ちゃんと対峙し中段の構えをする甲崎さん。竹刀を振りかざすも、そのまま動けなくなってしまった。 「茨木さんの覇気に圧倒されて一歩も踏み込めませんでした。まだまだ修行が足りないですね。鍛練に励みます」 竹刀を下ろすと甲崎さんが軽く頭を下げた。 「甲崎、千ちゃんを頼むな」 「はい、任せて下さい!」 お姉ちゃんの名前を聞くなり、甲崎さんの目がきらりと光った。

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