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番外編 悪戯されても起きない地竜さん

右か、左に体をずらして避ければいいだろうけれど、なぜか足が縫い止められたように動かなくなってしまった。ぶつかっても心望だけは落とさないように両手でしっかりと抱き抱えた。 その直後。ドスンとすごい音がした。 譲治さんがそのままの勢いでぶつかってきたはずなのに痛みも衝撃も何もなかった。一瞬何が起きたのか分からなくて。状況を理解するまで時間がかかった。 「さっきまで寝てたはずじゃ……あれ、いない。いつの間に移動したんだ?」 彼が驚くのも無理がない。 陽葵と一緒に布団に寝ていた地竜さんが僕の足元にいるんだもの。そりゃあそうだ。 「何があってもきみと子どもたちは守る。この命に代えてもーーそう誓ったはずだ。良かった。きみとここちゃんが無事で」 にこっと優しく微笑んだのち、苦悶の表情を浮かべうずくまる譲治さんをじろりと睨み付けた。

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