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番外編 お姉ちゃんとチカちゃん

「地竜のヤツ、美女四人組に囲まれて鼻の下を伸ばしていたぞ。千里、チカ」 龍成さんが二人に膝掛けをそっと渡した。 「俺や兄貴は見慣れているが、他の若い連中にはかなり刺激が強すぎる。譲治なんて顔を真っ赤にして、挙動不審になっていたぞ。暑いは禁句だ。橘の雷が落ちる前にさっさと隠せ」 「真顔で言わないでよ」 「怖い~~」 「ぶりっこは止せ。頼むから奏音の前で俺を怒らせないでくれ」 龍成さんの言葉に驚いたような表情を見せるチカちゃん。 「どうしたのチカ?」 「だってあの龍がちゃんとパパしてるんだもの。感動しちゃった」 「小さな命を預かるんだもの。誰かさんみたくいつまでもお子ちゃまっていう訳にはいかないでしょう。奏音の命を守り、育む。それが大人としての責任だもの。龍にも父親になる自覚がやっと芽生えてきたってことかしらね」 「たまにはいいことを言うじゃないか」 「たまには褒めないと、龍だって面白くないでしょう」 千里さんがくすくすと愉しそうに笑った。 膝掛けを膝の上に掛けると、両手を合わせていただきますをした。息ぴったり。何をやるにも一緒。お姉ちゃんとチカちゃんはまるで太惺と心望みたいにそっくりだ。

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