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番外編 のんちゃんはママ代わり

「アタシのタグじゃ駄目?譲治が嫌がるから香水も化粧品も匂いの少ないものにしてきたの」 橘さんが譲治さんを起こさないように体を支えている間、お姉ちゃんとチカちゃんが素早く入れ替わった。 「挨拶だけしてくるわね。お腹が空きすぎて、お腹と背中がくっつきそうだから」 お姉ちゃんが広間へ急いで向かった。 「譲治、ちゅーちゅーってアタシの服を吸ってるわ。なんか、こうして見ると、たいくんとここちゃんの姿に重なるわ。のんちゃんって寝言を言ってるし」 ぷぷッとチカちゃんが笑った。 「寝顔はまさに天使ね。譲治は、心が子どものまま大人になった。そんな感じよね。兄ちゃんは俺たちを守るため必死だった。汚れ仕事でも、嫌なことでも、楮山に命じられれば、へらへらと笑って引き受けていた。本当はやりたくなかったはずだって。あと一年早くハルくんに出会っていれば、望実さん、生きていた。それが悔しいし、やりきれないって。達治が言ってたわ。望実は譲治のお母さん代わりだったのかも知れないわね」 幸せそうな顔でタグを握り締める譲治さん。夢の中で望実さんと達治さんとご飯でも食べているのか?口がもごもごと動いていた。

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