2648 / 3283
番外編遥琉さん、妹二人から熱烈歓迎される
「死ぬかと思った」
ふらふらと部屋に入ってくると布団に倒れ込んだ。
「遥琉さん大丈夫?」
「二人して馬鹿力なのに、一切手加減なしだ。地竜の二の舞になるかと思った」
「遥琉、布団にキスマークを付けたら橘に怒られるぞ」
地竜さんに言われた時はすでに遅かった。
「落ちにくいルージュだって言ってたんだ。すっかり忘れていた」
「そのくらいで怒るほど心は狭くはありませんよ」
橘さんが気配もなく現れたものだから、慌てて彼が飛び起きた。
「余計な仕事を増やしてしまいすまない」
「あら、ずいぶんと今夜は素直ですね」
「だって、それは、その………」
「たまにはしおらしい態度の遥琉を見るのも一興ですね」
橘さんがクスクスと笑った。
「何か用か?」
「用がなければ来てだめですか?」
「だめじゃない。いつでも大歓迎だ」
「海翔くんの祖父から電話です。育児放棄の疑いがあるから海翔くんをすぐ保護してくれと、警察に何度も頼んだのに門前払い。相手にもしてくれなかったのに、菱沼組の組長さんはすぐに動いてくれた。感謝してもしきれないと。警察より菱沼組の組長さんのほうが頼りになる。弱い者の味方だと」
大山さんがまだ家の中にいると知っていた橘さん。聞こえるようにわざと大きな声でそう言うと彼に子機を手渡した。
ともだちにシェアしよう!