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番外編 生まれてはじめての長靴に大興奮の太惺と心望

ぽつん、ぽつん。ぽた、ぽたぽた……と風まじりの強い雨が降っていた。チカちゃんから生まれてはじめて長靴をプレゼントされた太惺と心望は朝から大興奮。早くお外に行きたくて気がそぞろでご飯どころではなかった。 「太惺も心望も、度会さんたちが大事なお話しをしているからしーだよ」 人差し指を唇の前に立てると、二人は僕の真似をして、同じように唇の前に人差し指を立てると、何が面白かったのか、二人してお腹を抱えキャキャと笑い転げていた。 さっき広間にお茶を出しに行ったとき、度会さんは、幹部たち数人を広間に集め腕を前で組み険しい表情であぐらをかいて座っていた。近寄り難いオーラに、幹部たちも気難しい表情を浮かべて押し黙っていた。 静かにって言うだけ無駄なのは分かってる。子どもがやけに静かにしているときは大抵悪戯をしているか、よほど具合が悪いときだけだもの。 「たいくん、ここちゃんお待たせ」 傘をさした信孝さんが姿を現したものだから驚いた。 「龍から、晴と未来が着ていたレインスーツないかって電話をもらって、急いで探したんだ。一回か二回しか着てないから、そっくりしているから捨てるのも勿体なくて。良かった、とっといて。緑色だけどいいよね?」 「はい。ありがとうございます」 仕事中だったのに二人のためにわざわざ自宅に戻ってくれて、こうして届けてくれた。感謝してもしきれなかった。 「こんなのお安いご用だよ。いちいち買ってもいられないからね」 信孝さんは二人の頭をぽんぽんと撫でると、慌ただしく会社へ戻っていった。

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