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番外編 不協和音

龍成さんが出掛けてから十分後。近所に住む町内会長さんが度会さんを訪ねてきた。 「さっきコンビニで上町ニ丁目の町内会長にいっきゃたんだ。そしたらごみ集積所にこれが捨ててあった。なじょすっぺって相談されて。見た感じ新しいし、そっくりしているし、中を見れば分かるが教科書も入ったままなんだ。度会さんと卯月さんは顔が広いし、何か知ってるかと思って」 ごみ袋に入った藍色のランドセルを度会さんに渡した。 「雨が降っているのにわざわざすまない。上町ニ丁目の町内会長に礼を言っておいてくれないか」 「分かった。伝えておく。しかしまぁ、今の小学生はこだに重い物を背負って学校に通ってんだな。たいしたもんだな」 「立ち話もあれですからお茶でも飲んでいったらどうですか?」 紫さんが声を掛けた。 「そうしたらいい。この天気だ。畑仕事にならないだろう」 「それじゃあ、遠慮なく」 町内会長さんは呑み仲間であり将棋仲間でもある。広間に場所を移すと、お茶を飲みながら将棋を指しはじめた。 森崎さんたちが中を確認すると、教科書には平仮名と漢字で【たき田 海と】と大きく名前が書かれてあった。

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