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番外編 海翔くんはずっとSOSを出していたのに

次のページを捲ると、かなたくんの生活ノートはいいなぁ。いろんな字がかかれてあって。そう書かれてあった。 彼が見ててくれたときは印鑑の代わりにう。柚原さんが見ててくれたときはゆ。橘さんが見ててくれたときはた。僕のときは、滅多にないけどみと書いて、最後まで諦めずに頑張りましたと一言、書くようにしている。 「水曜日は父と書いてあって、担任の先生もそれを見て思わず笑っていたと、奏音が話していた。海翔は奏音が羨ましかった。でもいじめていい理由にはならない」 箸や鉛筆の持ち方が違う。読み書きも出来ない。海翔くんをはじめとするクラスの男子にバカにされ、からかわれ傷付いた奏音くん。仲直りしたとはいえやられたことは一生忘れることは出来ない。 「海翔にも事情があったとはいえ、やりきれないな」 くしゃくしゃに丸められたプリントを一枚ずつ、破かないように慎重に広げていた地竜さんが何かに気付いた。 「なんでプリントの中からまた紙が出てくるんだ。ん?この匂い……」 鼻を近付けてくんくんと匂いを嗅ぐ地竜さん。 「ハチ、きみも嗅いでみろ」 地竜さんがその紙を蜂谷さんに差し出した。 「オヤジとチカに連絡をしたほうが良さそうだな」 蜂谷さんがスマホを耳にあてた。 そのプリントは月曜日に出された計算問題の宿題だ。100点満点のプリントの裏に海翔くんは赤鉛筆でママもおじさんもおじちゃんもみんなうそつき。大きらい。そう書いていた。

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