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番外編 隣に鉄将が寝ている幸せ

「はじめまして。卯月の家内です」 どきどきしながら電話に出た。 ーはじめまして。鉄将の母です。卯月さんには感謝してもしきれないです。鉄将とまた一緒に暮らせる日が来るなんて思ってもみませんでした。朝起きたら隣に鉄将が寝てて、夢じゃなかったんだ。本当に鉄将が帰ってきてくれた。涙が出るくらい嬉しかった。本音を言うと、怖かった。私のことを恨んでいるんじゃないかって。椎根のところに幼かった鉄将を置いていったのは事実ですからー 女性は言葉を詰まらせながらもそう話してくれた。 ー電話をしたのは一つだけ気になることがあったからです。あ、でも気のせいかも知れないんですけど………ー 「僕で良かったら話してください」 ー鉄将のクラスメイトの海翔くんを迎えに来た祖父と会ったんですけど、椎根と同じ目をしていたんです。だから急に恐くなって……一緒にいた刑事さんに元刑事さんですか?って聞いたら、詳しいことまでは分からないと言われて。無駄な心配、取り越し苦労ならそれはそれでいいんですけど……ー 「主人に海翔くんの祖父に連絡をするように頼んでみます」 ーお願いしますー 奏音くんとめぐみちゃんと優輝くんと喋りたい!一太くんとも!鉄将くんの声が漏れ聞こえてきた。 ー学校よー ーえぇ~~なんでー ー我が儘言わないのー 他愛のない親子の会話を聞いているうち僕まで幸せな気持ちになれた。良かったね、鉄将くん。お母さんと再会出来て。 最近ただでさえ涙もろくなっているのに。もう、やだ。目頭をそっと押さえた。

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