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番外編 俺の大事な息子

「奏音!」 はぁはぁと息を切らしながら龍成さんが駆け込んできた。 「お帰り龍。ずいぶんと早かったじゃないの」 「奏音は?無事なのか?どこにいるんだ?」 「まずは落ち着こう」 「息子の一大事に落ち着いてなんかいられるか!千里、奏音は?俺の大事な息子は?」 「龍、千里の言う通りだ。落ち着け。奏音は寝てる。大きな声を出すな」 「そんなこと言ったって……」 普段は冷静沈着な龍成さんの慌てように彼もお姉ちゃんも驚いているようだった。 ちょうどそこへ泣きながら奏音くんが姿を現したものだから、龍成さんがおろおろしはじめた。 「どうした?何があった?もしかして痛いところがあるのか?」 奏音くんが首を横に振った。 「じゃあ、なんだ?」 「まどろっこしくて見れいられねぇ。龍、奏音は嬉しいんだよ。息子って呼んでもらえたことと、龍が心配してくれて、すぐに駆けつけてくれたことが。いい加減分かれ」 「そうなのか?」 奏音くんは涙を手の甲で拭いながら大きく頷いた。 「パパに敵うものはものはないわ」 「いや、ひとりいる」 「もしかして光希ママのこと?」 龍成さんが二度大きく頷いた。 「なるほどね」 くすりとお姉ちゃんが愉しげに笑った。

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