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番外編 俺の大事な息子

「りゅうパパ、抱っこ」 「おいで。幾らでも抱っこしてやる」 膝を立てて座り、両手を大きく広げる龍成さん。広くて温かな胸元に飛び込もうとした奏音くんだったけど、 「やっぱりいい」 ぎゅっと上唇を噛み締め、ぶんぶんと首を横に振った。 「なんで?」 「いつまでも甘えん坊さんでいたら、りゅうパパみたく一人前の男になれないもの。かなた、早く大人にならなきゃ」 「俺と遼と光希を取り合うためか?」 「うん」 意思の強そうな眼差しを龍成さんに向ける奏音くん。 「なかなかいい面構えになった。会わないうちにまた大きくなったな」 我が子の成長ぶりに目を細める龍成さん。大きな手で頭を撫でた。 「奏音、龍は日曜日に東京に帰る。奏音とまた会えなくなるから、寂しいのは龍のほうかも知れないぞ」 「一太くんパパ、ほんとに?」 「あぁ」 「分かった」 迷いが吹っ切れたのか、奏音くんはにこにこしながら龍成さんの胸元に飛び込んでいった。 「りゅうパパありがとう。かなたうれしい。だってはじめてだから」 「何がはじめてなんだ?」 「かなたがぐあいがわるくても父さんは帰ってこなかった。いつもひとりぼっちだった。大丈夫かって、心配されたこともない。りゅうパパがかなたのことを心配してくれて、いそいで帰ってきてくれたでしょう?大事な息子だって言ってくれたでしょう?だからね、うれしいんだ」 奏音くんの目からは一度は止まったはずの涙が再び溢れていた。

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