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番外編 命のバトン
「いいのぼくで?」
「奏音がいいんだ。奏音じゃないと駄目だ」
「ぼく、いらないって言われたんだよ」
奏音くんが唇を噛み締め体を震わせた。
龍成さんはまるで割れ物を包み込むように奏音くんをそっと優しく抱き締めた。
「いらない子なんて一人もいない」
柔らかな髪に頬をすりすりさせると、
「りゅうパパ、くすぐったい」
奏音くんが体をくねらせた。
「暴れると落っこちるぞ」
「だって、りゅうパパのほっぺちくちくしてくすぐったいんだもの」
「朝ちゃんと剃ったはずなのに。変だな。もしかしてパパ剃り忘れたかな?」
「きっとかなたがねぼうしたせいだね。ごめんね」
「いいってことよ」
二人は目を合わせると、ぷぷっと吹き出した。
「かなた、みつきさんママとりゅうパパとりょうおじちゃんの息子になる」
「じゃあ、光希に連絡するか?絶対に喜ぶぞ」
「うん!」
さっきまで泣いていたから、二人の笑う姿を見て、僕も彼もお姉ちゃんもひと安心した。
二人はおそらく気付いていない。
根岸さんが柱の影に隠れ、はらはらしながらずっと見守っていたことに。
それから数分後、髪を後ろで束ねたチカちゃんが険しい表情で仏間から戻ってきた。
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