｢宋は引っ張りだこだ。渡辺に捕まり、大山に捕まり、ハチに捕まり、千里に捕まり。モテる男は大変だな」 ｢あのな覃……」 他人事みたいに面白がっている覃さんに、地竜さんがやれやれとため息をついた。 ｢あ、そうだ。すっかり思い出したぞ」 覃さんがジャケットの内ポケットやズボンの後ろのポケットをごそごそと探りはじめた。 ｢未知、靴下が出てきた」 行方不明になっていた太惺のもう片方の靴下をぽんと渡された。 ｢覃さんのポケットにはいろんなものが入っているんですね」 飴の包み紙に煙草の空き箱にペットボトルのキャップにメモ紙。小銭と、今すぐ当たるお得キャンペーン！半額割引と書かれた黄色いシールと、最後に探していたスマホが出てきた。 ｢覃は拾ったもの、貰ったもの、なんでもポケットに入れてしまう癖があるんだ。直せと言ってるんだかな」 ｢なぁ、覃、その割引のシールは？」 ｢これか？海翔とバイバイしたあと、落ちていたから拾ったんだ」 ｢見せてもらってもいいか？」 彼がゆっくりと体を起こした。 ｢字が細かすぎて読めなくて。いまいちよく分からん」 覃さんの手元をじっと見つめる彼。