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番外編 覃さんの頼み事
台所で洗い物をしていたら、
「未知、頼みがある」
覃さんがひょっこりと顔を出した。
「覃さん、作戦会議は終わったんですか?」
「俺が言いたいことは全部言ってきた。俺の出番はない。任務完了だ。それより……」
覃さんがキョロキョロとあたりを見回した。
「覃さんも育ち盛りだから、夕飯を食べてもすぐにお腹が空きますよね。おにぎり作りますか?」
「いいのか?ねだりに来たようで悪いな」
「こんなのお安いご用です。ちょっとだけ待っててもらっても大丈夫ですか?」
「あぁ。お利口さんにして、座って待ってる。出来たら持って帰りたい」
「分かりました」
茶碗の洗剤の泡を洗い流し、蛇口の水を止め、手をタオルで拭いた。
「未知、本題だ。寝る前にボスの両方の耳にこれをやってくれないか?くすぐったい、冷たいから嫌だと騒ぐ」
点耳薬と書かれたビニールの小袋を渡された。
「地竜さん、どこか悪いですか?」
「たいしたことはない。耳の奥が痒いだけだ。未知はすでに知っていると思うが、ボスは敵なし、怖いものなしだが、なぜかどういう訳か耳掃除が大嫌いなんだ。未知の言うことなら大人しく聞くと思うんだ」
「覃さんで駄目なら、僕ならもっと駄目なような気がするんですけど………分かりました」
「冷蔵庫で保管必須だ」
「じゃあ、冷蔵庫にすぐに入れますね」
「頼む」
子どもたちの薬と間違えないように、ディと書いてから冷蔵庫にしまった。
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