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番外編 覃さんの頼み事

炊飯釜に残っていたご飯を全部握ったら全部で五個、おにぎりが出来た。るんるん気分で鼻歌を口ずさみながら紙袋に入れる覃さん。目がキラキラと輝いていて、まるで遠足前の子どもみたいだ。 「遥琉さんに何度か注意されたと思うけど、歩きながら食べるのはマナー違反です。約束できますか?」 「分かってる。玄関を出るまでは我慢する」 本当は門を出て車に乗り込むまでは我慢してもらいたかったけど、いっぺんに言ったら覃さんの頭がこんがらがってしまうと思い、思いとどまった。 覃さんが台所を出ようとしたら海苔の匂いにつられたのか亜優さんが顔を出した。中国語だから何を話しているのかちんぷんかんぷんだったけど、亜優さんは覃さんにおにぎりを三つちょうだいって言ってるのかな?覃さんはその分自分の食べるのが少なくなるから必死で首を横に振っていた。 そんなやり取りが三分くらい続いて、渋々ながらおにぎりを二個、亜優さんに渡すと、むすっとして足早に台所を出ていった。 「食べ物の恨みは怖いからね~~亜優、大丈夫?」 「チカちゃん。お帰りなさい」 「ただいま未知。お腹ペコペコなんだけどご飯ある?」 「ご飯はないけど乾麺があるのでそれを茹でます」 「じゃあ、手伝う」 チカちゃんが袖を捲った。 亜優さんはチカちゃんに何を言われたか理解できずキョトンとして首をかしげていた。

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