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番外編 地竜さんの決意

「まるで海の底にいるみたいに静かだな。警戒しなくてもいい。いきなり押し倒したりはしないから隣においで」 座布団をぽんぽんと叩いた。 彼の姿を無意識のうちに探して、キョロキョロとあたりを見回したら、地竜さんの大きな手が手の甲に重なってきた。 「さっき言ったことを撤回するぞ。邪魔者はいないみたいだし、きみを押し倒す千載一遇のチャンスだ」 熱っぽい眼差しでじっと見つめられ、地竜さんの顔がぐいぐいと近付いてきた。 「何を訳の分からないことを言ってるんだお前は」 「卯月抜き、姉抜き、親抜き、お子さま抜きでやっと未知と二人きりになれると思ったのに」 がっくりと肩を落とす地竜さん。 「俺を出し抜こうなんて100年早い。地竜、手」 「手?」 「どさくさに紛れて握るな」 「恋人繋ぎって言うんだろうこれ?一度やってみたかったんだ」 嬉しそうにぶんぶんと振る地竜さん。 「二ヶ月後にはいったん戻るから待っててくれるか?その次は……一年か、二年……もしかしたら……」 「地竜、余計なことを考えるな」 彼が隣に腰を下ろすと、空いているもう片方の手をそっと握り締めてくれた。

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