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番外編しあわせなひととき
「未知、めっけ!」
「目が覚めたら隣にいないんだもん。心配したんだよ」
「遥琉お兄ちゃん邪魔」
「地竜も邪魔」
お揃いのさくら色の浴衣を着たお姉ちゃんとチカちゃんが駆けてきて、彼と地竜さんを押し退けると、ぎゅっと抱き締められた。
「ごめんなさい」
あおお兄ちゃんと国井さんが見たら間違いなく鼻血を出すくらい浴衣姿が色っぽい二人。僕とは雲泥の差。大人の女性はやっぱり違う。ぽっとして見惚れていたらくすっと笑われてしまった。
「あのな……」
「千里、チカ」
彼と地竜さんの眉間にどんどん皺が寄っていった。
「見て分からないか?」
「え?何を?」
「だから」
彼が声を荒げた。
「もしかして夫婦水入らず、イチャイチャタイムだった?」
「見れば分かるだろう」
「ごめ~~ん。わざとじゃないの」
「許して~~」
二人が手を合わせて謝った。
「絶対にわざとだろう」
「さては橘の差し金か?」
「そんな訳ないじゃん」
お姉ちゃんが袢纏を羽織らせてくれた。
「膝を割って話すなんてめったにないでしょう。だからよ」
お姉ちゃんの声色が急に低い声に変わった。
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