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番外編 波乱の予感
「地竜、猿芝居をするためにわざわざ帰国した訳じゃないんでしょう?」
「人妻の声は色っぽくてぞくぞくするが、会長の声も痺れるくらいかっこいいな」
「地竜、故意に話をはぐらかそうとしていない?」
「そんな訳ないだろう」
「急に饒舌になったのがその証拠よ。アタシに用があるから、あとを追い掛けてきたんでしょう?違う?」
「未知に会いに来たんだ」
「シラをきる気?」
手を緩めないお姉ちゃんの追求に地竜さんがついに観念した。
「遺体と対面したい。千里のほうから甲崎か国井に頼んでもらおうと思ったんだ」
「遺体?」
「四日前だ。男性の遺体が東京湾に浮かんだ。身元が分からないように顔が焼かれて、集団で暴行を受けたんだろう。損傷が激しく、被害者の身元特定には至っていない」
「地竜の知り合い?」
「緑竜が殺され東京湾に遺棄された。関係筋から聞いた。信憑性はある。なにより身体的特徴と、背中のドラゴンの刺青が一致している。もし遺体が緑竜《リュノン》なら俺が引き取るのが筋、そう思ったんだ。見れば遺体が緑竜《リュノン》なのか白竜《バイノン》なのかすぐ分かる」
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