2717 / 3282

番外編 親孝行な息子たち

「電話は録音してある」 「そうか、分かった。龍と奏音を見送ったら事務所に向かう」 ひろお兄ちゃんがギクッとして慌てて上体を起こした。 「あ、あのな心、未知には焼きもちを妬かないって確か言ったよな」 心さんの手には果物ナイフが握られていた。 「心、物騒なものを持って歩くな。危ないだろう」 彼より先に鞠家さんが立ち上がると僕の前にすっと立った。 「姐さんを刺すなら、この俺を刺せ。それで気が済むなら本望だ」 ぷぷっと心さんが急に笑いだした。 「ごめん。いろいろと勘違いさせて。石井さんという農家のかたがミニメロンのころたんを子どもたちに食べさせてくれって持ってきてくれたんだ。だから子どもたちに切ってあげようかなって思って」 「メロンなんかどこにある?」 彼が周囲を見ると遥香と幸ちゃんがよいしょよいしょと一緒にミニメロンを運んできた。 「お手伝いがしたいって頼まれて。無下に断るのも悪いかなって思って。裕貴さん、大丈夫だよ。刺しはしないから。そこまで僕、鬼じゃないし」 ふふふと意味深な笑みを浮かべる心さんにひろお兄ちゃんの顔はひきつっていた。恐妻家のひろお兄ちゃん。生きた心地がしなかったと思う。

ともだちにシェアしよう!