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番外編 紫さんの辛い思い

「初めは退院後は私たちと一緒に暮らすと話していたのよ。それがねどんな心情の変化があったのか知らないけど、手の平を返したように一人でも三人を育てられる。だからほっといってと急に言い出したのよ」 朝ごはんを食べたあと、メロンを美味しそうに頬張る子どもたちを目を細めて眺めながら紫さんが寂しそうに呟いた。 「意地を張らなくてもいいのに。甘えてほしいのに……幸ちゃんもここでの生活と、新しい保育所にもやっと慣れて、よく笑うようになったのに、また振り出しに戻りそうで怖いのよ」 「ゆかりさん、だいじょうぶ?」 幸ちゃんがすっと立ち上がると紫さんのもとに駆け寄った。 「おなかいたい?」 「大丈夫よ」 「おねつは……」 幸ちゃんが紫さんのおでこに手をあてた。 「ない!よかった」 「幸ちゃん心配してくれてありがとう」 紫さんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。 「ゆかりさん、一緒に食べよーー!」 「となり空いてるよ!」 めぐみちゃんと優輝くんが笑顔で手を振った。 「男なんて捨てるくらい幾らでもいる。子どもは金になる。海翔の母親にすっかり丸め込まれやがって」 度会さんが険しい表情を浮かべた。

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