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番外編 喉元を過ぎれば熱さを忘れる

「喉元を過ぎれば熱さを忘れる。なのかしらね。人生100年。谷あり山あり。苦あれば楽あり。楽ばかりしているとあとで取り返しのつかないことになるのに………」 幸ちゃんが不思議そうにきょとんとしていた。 「あらあら幸ちゃんには難しかったわね。お姉ちゃんとお兄ちゃんのところに行こうね」 紫さんが幸ちゃんの手を取ると、仲良く手を繋いでめぐみちゃんたちがいるテーブルへと移動した。 「信孝が激怒し、柚と大喧嘩した」 「え?嘘」 度会さんの言葉がにわかには信じられなかった。 信孝さんも彼と同じで滅多なことでは怒らない。 信孝さんを激怒させるくらいだから腹に据えかねるくらいよほどのことがあったに違いない。 「未知さんに嘘はつきたくないから正直に言うが、信孝は子どもたちの親権を柚から取り上げるべく橘に相談している」 「そんな……」 言葉を失った。 「成長するごとに楮山に顔が似てきている優輝を見るのが辛いんだと。どうしても愛せないんだと。めぐみと幸に関してもそうだ。縣一家の関係者として自分と同じ目に遭うならいっそよその家にもらわれたほうが幸せになる」 「身勝手なひとです」 橘さんの苛立った声が聞こえてきて。びくっとして後ろを振り返ると橘さんがいつの間にか後ろにいたからびっくりした。

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