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番外編 一央さんが抱える心の闇

「誤解があったらすみません。私が言っているのは柚さんのことではなく一央さんのことです。柚さんが誰にも相談できず悩み苦しんでいるのに、一央さんには他人事でしかないのでしょう。何を言ったかまでは分かりませんが、柚さんが傷付くことを笑いながら口にしたそうです。悪気がなかったとしても、冗談だとしても、言っていい言葉と悪い言葉があります。柚さんはもう頑張れないと。何もかもが嫌になった。いっそ子どもたちを道連れに死んだほうが楽になる。だから死なせてほしいと信孝さんに頼んだそうです。信孝さんが一央さんに対して激怒するのも当然です。柚さんと大喧嘩したのは子どもたちを道連れに死ぬなどあってはならないと心を鬼にして叱りつけたんです。それで喧嘩になったんです。龍成さんが仲裁に入ったのですが、両者一歩も譲らずです」 「だから柚さんは一緒に暮らさないと急に言い出したんですね」 「そうです。信孝さんが柚さんから親権を取り上げると言ったのは子どもたちの命と未来を守るためです」 橘さんが紫さんを囲み楽しそうにはしゃぐめぐみちゃんたちをじっと見つめた。 「子どもたちの幸せそうな寝顔を見れば一日の疲れなんて一瞬で吹き飛ぶ。子どもたちの笑顔はまさに幸せのお裾分けだ。だから俺ら大人が未来ある子どもたちを守ってやらないと。姉夫婦のことで迷惑を掛けてすまない」 奏音くんを迎えに来た龍成さんが度会さんの前で正座をすると深々と頭を下げた。

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