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番外編柚さんが心配なのはみんな一緒

「海翔の母親は心の隙間に入り込むのが上手い」 「つけこみ商法というのが昔あっただろう?」 「伊澤か?なんだいたのか。いるならいると言ってくれればいいのに」 「たまたま偶然通り掛かっただけだ」 伊澤さんは根岸さんと一緒に亜優さんとウーさんを迎えに来たみたいだった。 「ストレス社会と言われるくらいだからストレスを原因とした心の不調は誰にでも起こり得るものだ。当時関心が高まっていたのがヒーリングやカクセリングなどとよばれる精神修養を目的とした講座だ。しかしそうした講座に参加した人から悩みや不安につけこまれて高額の商品やサービスを購入させられたなどの相談が寄せられていた。今はスピリチュアル詐欺とか、つけこみ型勧誘詐欺とかいうみたいだが」 「シェドと同じ手口か?」 「そうだ。騙される人は何度も被害にあう。末恐ろしい世の中になったものだ。鞠家とチカと話をしていてある事件を思い出した。海翔の行方を探す手がかりになるかも知れない。それともうひとつ。俺たちで良ければ話し相手になると柚に言った。じじぃたち二人してお節介焼きだからな。柚の心が少しでも晴れるように。横道に逸れないように。期間限定にはなるが、俺らで柚と奏音をしっかりと見守る」 「おしゃべりはそのくらいにしろ」 根岸さんの怪訝そうな声が聞こえてきた。 「なんで怒ってるんだ」 「怒ってねぇ。急にいなくなるから心配したんだぞ」 なんだかんだいいながらも根岸さんと伊澤さんは柚さんのことが心配でたまらない。そんな感じだった。

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