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番外編 子煩悩なひろお兄ちゃん
「真っ昼間から未知さんを口説いて布団に連れ込む魂胆ですか?」
「そ、そんな訳ないだろう」
橘さんは神出鬼没だ。
いつどこからか現れるのかまったく予想がつかない。
「明日の葬儀の件で壱東さんが遥琉に相談があると探していましたよ」
「そうか。分かった」
「裕貴さんと龍成さんがここにいることは限られた人しか知らないはずなのに、どこでどう漏れたのか。葬儀の日程を問い合わせる電話が鳴りっぱなしです」
「義理掛けはヤクザにとって大事な付き合いだからな。あやみのときも参列者が火葬場に入りきらないくらい集まって大変なことになったからな。参ったな」
髪を指でくしゃくしゃと搔く彼。
「火葬場に迷惑を掛けないように策を練るか。よし、分かった。橘、イチに五分だけ待ってくれと伝えてくれ」
「は?」
「は?じゃない。野暮用があるんだ」
彼に手を引っ張られ、そのまま部屋に入るとパタンと戸を閉めた。
頬に彼の指先が触れてきて。スイと頤を掬われ、直後にそっと口付けられた。
そのまま肩を抱き締められ、全身を彼の温もりにすっぽりと包まれた。
啄むようなキスを繰り返すうちしだいにキスが深くなり、唇が離れたときには息があがり、頭がぼぉーとしていた。足がふらつき思わず彼にしがみつくと、微かに笑い声が聞こえてきた。
「未知とどうしても二人きりになりたかったんだ。続きは明日かな?じゃあ、行ってくる」
おでこにちゅっと軽くキスをすると爽やかな笑顔で壱東さんのところへ向かった。
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