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番外編 子煩悩なひろお兄ちゃん

異変に真っ先に気付いたのはひろお兄ちゃんだった。 「なんの音だ?」 「音なんか聞こえないけど」 「カチカチという音が聞こえないか?耳障りな音だ。まさかとは思うが心、未知、子どもたちを連れて早くここから避難しろ。二人とも頼むから暴れないでくれ。また遊んでやるから。ここにいたらとんだとばっちりを食らい杖の先で頭を叩かれるかも知れない。心、未知、ぼぉーとしてないで早く二人を連れていけ」 ひろお兄ちゃんの服にしがみつき手足をバタつかせて暴れる二人を無理矢理引き離すと、これでもかと下唇を伸ばしブーイングされてしまった。 戸を開けようとしたらバタンと勢いよく開いた。 「一央さん困ります」 「オヤジから出入り禁止と言われませんでした?」 「五月蝿いな。居留守を使っているくらい分かる。どけ。邪魔だ」 体を張って阻止しようとした譲治さんと若い衆を片手で押し退けると、松葉杖をついた一央さんが怒り心頭の様子で現れた。

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