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番外編 子煩悩なひろお兄ちゃん

「なぜ貴方がここに?」 ひろお兄ちゃんがまさか福島にいるとはこれっぽっちも思わなかった一央さん。かなり驚いていた。 「一央じゃないか。久し振りだな。歩けるまで回復して良かったな。なんでいるんだって?それは葬式に参列するためだ。龍成は奏音と出掛けているぞ」 「嘘つけ」 「嘘じゃない。それともあれか。俺が嘘をついているとでも?」 ひろお兄ちゃんが一央さんをじろりと睨み付けると、 「信用できない」 ぷいっとそっぽを向いた。そのとき何気に目が合ってしまった。にやりと薄笑いを浮かべる一央さん。すごく嫌な予感がした。 「なんだ、いたんだ。小さいから全然気付かなかった」 嫌味たっぷりに言うと、 「幸せそうなその顔がムカつくんだよね」 松葉杖を振り上げるようなそんな仕草をしたから、咄嗟に後ろを向いて、一央さんに背中を向けた。 僕はどうなってもいい。何があっても心望を守らなきゃ。それしか頭になかった。 太惺を抱っこした心さんも僕と同じように後ろを向いていた。 覚悟を決めて目を閉じた。 「未知、やけに静かじゃない?」 心さんに言われ、おそるおそる目を開けて、ちらっと一央さんを見ると、蜂谷さんに松葉杖を取り上げられ、青空さんに手首を掴まれ、身動きが取れなくなっていた。 「龍成さんと一緒に岳温泉に行ったはずじゃあ」 「嫌な予感がして、鞠家と佐治に急遽代役を頼んだ」 蜂谷さんがにやっと笑った。

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