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番外編 子どもたちをこれ以上悲しませないで

「一央、めぐみと優輝をこれ以上悲しませんな。龍がいないのは本当のことだ。ハチの実家に出掛けている。何も知らない裕貴を夫婦の揉め事に巻き込まないでくれ。裕貴は関係ない」 ちょうど戻ってきた彼が場をなんとか収めようとしたけれど、一央さんは憮然として面白くなさそうだった。 「青空さん、もういいよ」 めぐみちゃんが青空さんの服を引っ張った。 「もういいとは?」 「はなしてもいいってことだよ」 「なるほどな。めぐみがそう言うなら分かった。離す」 青空さんが手をすっと離した。 松葉杖がなくて一瞬ふらついた一央さんの体を彼が支えた。 「今後二度と子どもたちを叩かないと約束するなら松葉杖を返してやってもいい。約束しないなら強制的に病院へ送り返す。おおかた無断で病院から抜け出してきたんだろう?」 一央さんはめぐみちゃんと優輝くんを交互に眺めた。 「なぁ、一央。意地を張らずにたまには親子水入らずの時間を過ごしたらどうだ?幸も会いたがっていたぞ」 彼の問いかけに一央さんは黙り込んでしまった。

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