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番外編 子どもたちをこれ以上悲しませないで
「分かった。卯月の言う通りにする。だから松葉杖を返してくれ」
蜂谷さんが一央さんの顔をじっと見つめた。
「疑うのか?これだからデカは嫌いなんだ」
「悪かったな。元デカで」
嫌味を言われても蜂谷さんは余裕の笑みを浮かべてさらりと受け流した。
「一央、狼少年が最後にどうなったか。頭がいいきみなら分かるよな?」
「いちいち言われなくてもそのくらい分かるし。口やかましいと若い衆にウザイって嫌われよ」
がざっと乱暴に松葉杖を蜂谷さんの手から取る一央さん。
「めぐみ、幸は?」
「広間だよ。ままたんと遊んでいる」
「めぐみ、そのままたんって呼ぶの止めろ。男なのに気色悪い。懐柔しやがって」
ぶつぶつ言いながら松葉杖で体を支えながらゆっくりと歩き出す一央さん。僕の前を横切るときに一旦立ち止まり、
「姐さん、どーもお騒がせしました」
軽く頭を下げた。
「いいえ、大丈夫です」
「優しさが仇になるのも分からないなんて。つくづくお人好しな人だ」
気のせいかも知れないけど一瞬にやりと薄笑いを浮かべたようなそんな気がした。
とっさに後ろに下がろうとしたら、それよりも先にどんと強く肩を押された。足元がもつれ体が大きくふらついた。心望を落とさないようにしなきゃ。それしか頭になくて。そのあとどうなったかはよく覚えない。
「一央なにやってんだ!」
「上澤先生を呼べ!」
彼とひろお兄ちゃんの怒声と、心望と太惺とめぐみちゃんと優輝くんの泣き声でハッとして我に返った。
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