2740 / 3282
番外編 一央さん
「一央を病院に送り届けたのは信孝とヤスよ。病院スタッフに引き渡して、主治医に転院先の病院に紹介状を書いてもらえないか聞いていたときにまるで神隠しにでもあったかのように姿を消したのよ。それから一時間後に柚さんの病室に突然現れたの」
「遥琉さんを止めなきゃ。紫さん、七海さんどうしよう……」
「どうしたの未知?」
「まずは落ち着きましょうか?」
「遥琉さん、一央さんに言ったんです。柚さんと子どもたちを傷付けるような真似をしたらたたじゃおかないと」
「本部の幹部たちに睨まれながらも情けをかけたのにね。恩を仇で返すとはね」
紫さんの表情が一層険しくなった。
ー刺されたといっても掠り傷程度だ。心配はいらないー
通話中になっていたスマホから地竜さんの声が聞こえてきた。
ー 一番の犠牲者は子どもたちだ。めぐみと優輝には嘘をつかず、真実をちゃんと伝えて欲しい。二人とも敏感だから嘘をついても大人たちの顔を見れば何かあったとすぐに察する。騙しきれない。よけいに傷付くー
ともだちにシェアしよう!