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番外編 一央さん

「未知、めぐみたちはどうだった?」 「ママが帰ってくるって聞くなり幸ちゃんはぴょんぴょんと飛び跳ねてそりゃあもう大喜びだった。めぐみちゃんたちは僕や紫さんの言葉にじっと耳を傾けていた」 「そうか。完璧な人間はいない。苦手なもの、怖いもの、得意不得意なこと。人はみんな違っていて、それでいいと俺は思う。それが個性だからな。一央は血が苦手だ。トラウマになるような何かが昔あったんだろう。些細なことですぐ怒るし、手が出てしまうのももしかしたらそれに関係しているかも知れない」 「カミさんと子どもを抱き締めるためにこの手はある。人を叩いたり、殴ったり、傷付けるためにあるんじゃない。オヤジの格言は一央にこれっぽっちも響かなかったな」 ひろお兄ちゃんが両手をじっと見つめた。 「そうだな。でもヤクザをしている以上、そうもいかない。命を張るときだってある。なかなか難しいな」 彼がひろお兄ちゃんの肩をぽんと軽く叩いた。 「柚だって久し振りに子どもたちに会うんだ。不安でいっぱいだろう。だから柚が笑ってくれるように明るく笑って迎えてやろう。未知も面倒を掛けるが頼むな」 「うん。分かった」 柚さんと久し振りに会うから僕もドキドキしていた。笑って話せればいいな。めぐみちゃんたちが毎日お手伝いと勉強を頑張っていたことを伝えてあげたいな。

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