2747 / 3282
番外編 子はかすがい
あれから優輝くんは橘さんの側から片時も離れようとはせず、べったりと張り付いている。
「まさか、亭主と同じことを子どもたちに言うとはな。似た者夫婦とはよく言ったものだ。ここは縣一家ではない。菱沼組だ。郷に入っては郷に従えとよく言うだろう」
ひろお兄ちゃんも呆れてため息しかでないみたいだった。
「ゆうき、おでこ大丈夫?」
「うん。痛み止めのお薬を飲んだから大丈夫」
「痛かったらままたんとゆかりさんに言うんだよ」
「分かった」
優輝くんのおでこにはさっきまではなかった湿布がぺたんと貼られてあった。躓いて転んで同じところにたんこぶがまた出来た。ドジだよね。明るく笑っていたけど、本当は幸ちゃんが譲治さんに懐いている姿を見た柚さんがむしゃくしゃして優輝くんとめぐみちゃんに当たり散らした。優輝くんは譲治さんと二人の妹を庇い平手で叩かれたみたいだった。
優輝くんは最後までそのことをまわりの大人たちには言わなかった。柚さんのことも庇ったのだ。
橘さんもあえてそのことには触れず、いつも通り、笑顔で接していた。幸ちゃんもめぐみちゃんにくっついて全然離れようとしなかった。
ともだちにシェアしよう!