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番外編 内通者

「なんで一央のことが本部に筒抜けになっているか不思議だったんだ。犯人はやっぱりお前だったのか。おぃ、目を逸らすな」 ギクッとして肩を震わす若い男性。 「なんせ菱沼組は酒豪が多いからな」 ひろお兄ちゃんが日本酒を一本男性の前にどんと置いた。 「時間はたっぷりある。この際だ。菱沼組の若いのと親交を深めるいいチャンスだと思わないか?」 「そ、それだけは勘弁してください」 手酌でちびちびと呑んでいた度会さんがすくっと立ち上がった。 「おぃ、若いの。それは茨木と上総が今日のためにわざわざ送って寄越してくれた酒だ。俺の酒が呑めないのか?いい度胸してんじゃねぇかって茨木と上総に怒鳴られても知らねぇぞ」 お祖父ちゃんとお義父さんは長年本部のために尽くし、相談役という肩書きを持っている。 まさか二人のの名前が出てくるとはこれっぽっちも思わなかったのだろう。 度会さんに凄まれ、男性は盃になみなみと注がれた酒を一気に呑み干した。 「旨いだろう。福島は酒どころだからな」 「は、はい」 蚊の鳴くような声で返事をすると男性の額からは冷や汗がだらだらと流れた。

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